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2018年6月2日

システムインテグレーター業界の

2017年度業績と2018年度業績予想について

~ACS便りNo.28

〈三浦半島から見た朝陽〉 

いつも大変お世話になっております。株式会社ACSの淡路です。
『ACS便りNo.28(2018/6/1)』を送付します。

 

今回は、上場企業の決算発表を受けて、システムインテグレーター業界の前年度決算と今年度の業績予想を分析ましたので、下記の資料を参照しながらお読みいただくようお願いいたします。

【資料掲載】http://acs523.co.jp/news/news_195/

 

なお、分析に用いた業界の課題に関する考察は、以前のACS便り『“IT業界の今後の展望”  どうなる!?システムインテグレータ業界(1)~(4)』に記載されていますのでそちらも参考にしてお読み願います。

 

◎『“IT業界の今後の展望” どうなる!?システムインテグレータ業界(1)~ACS便りN0.16』

       http://acs523.co.jp/news/news_131/

◎『“IT業界の今後の展望” どうなる!?システムインテグレータ業界(2)~ACS便りN0. 17』  

       http://acs523.co.jp/news/news_138/

◎『“IT業界の今後の展望” どうなる!?システムインテグレータ業界(3)~ACS便りN0.18』             

   (http://acs523.co.jp/news/news_143/

◎『“IT業界の今後の展望” どうなる!?システムインテグレータ業界(4)~ACS便りN0.19』

   http://acs523.co.jp/news/news_154/

 

□ □ □ □

1.2017年度業績

 ①大手の業績

   ◎資料P3参照

 ②中堅の業績

   ◎資料P4参照

   ③業界全体の分析

   ◎分析の切り口(資料P5参照)

    ☒SIerの2017年度業績は、良好な事業環境にもかかわらず、上場企業全体金融を除く全産業1,566社)に

      比べると、だいぶ見劣りする結果になった      

    ・売上高増加率☞全上場企業:7.9%、大手7社:13.6%※、中堅:4.0%

      ※NTTデータのデルサービス部門の譲受による増収の影響で大幅増

       ・経常利益増加率☞全上場企業:16.9%、大手7社:8.3%、中堅:4.1%

     ・当期純利益増加率☞全上場企業:34.6%、大手7社:7.3%、中堅:△0.2%

 

   ☒なぜこのような結果になったのかを「過去から引きずる課題」と「今後の課題」の進捗状況を確認する

     ことで分析 

    ・「過去から引きずる課題」の達成による業績貢献

       〈課題1〉不採算案件の発生 

          ☞不採算案件の発生を防いで売上総利益の減少を回避

     〈課題2〉海外事業の展開 

          ☞海外事業展開で トップライン(売上)を上げる 

     〈課題3〉受託開発の構造変化

                         ☞顧客ニーズに対応したサービス提供型へのシフトで収益拡大

    ・「今後の課題」への対応による業績貢献

     〈課題4〉技術革新への対応 

         ☞技術革新による新規ビジネスの開発・推進で収益確保

     〈課題5〉働き方改革への対応

            ☞働き方改革の推進によるSIerの社員の定着と優秀な人材確保

            ☞顧客の働き方改革をITで支援して収益拡大

 

   ◎課題1:不採算案件の発生(資料P6参照)

    ☒事業環境が良いと無理してリスクの高い案件を受注しに行かない不採算

     は発生しにくいというのが経験則    

    ☒しかし、今期は良好な事業環境にもかかわらず、SIer14社中6社      

             (NTTデータ、SCSK、DTS、ISID、CEC、SRAHD)で業績に影響が出る

             不採算案件が発生。特にISIDの不採算は業績へのインパクト大

 

            ◎課題2:海外事業の展開(資料P7参照)

    ☒各社は中期経営計画で海外事業戦略を掲げて推進しているが、2017年度は

           NTTデータ以外顕著な成果が出なかった。            
    ☒海外売上比率はSIer14社中12社が10%以下。10%を超えるのはNTTデータ

    とCACHDの2社のみ 

     【NTTデータ】
      ・旧デルサービスの譲受により海外売上高は8,952億円(55.1%増)、
        海外売上比率は42.3%
       ・海外拠点は53か国・地域、241拠点、約81,000人体制

        【CACHD】
       ・成長市場であるインド・中国のITニーズを取り込む。

        不採算事業の切り離しと高収益事業への集中が課題
       ・海外売上高は117億円(5.2%増)、海外売上比率は22.0%

 

   ◎課題3:受託開発の構造変化(資料P8参照)

    ☒「受託開発がサービス提供型へシフトする」というトレンドに本気で

     対応しようとするSIerが数社現れ、一部で成果も出てきた。   
     しかし、各社の事業のひとつの柱になるまで成長はしていない

 

   ◎課題4:技術革新への対応(資料P9参照)

    ☒今盛んに言われている「技術革新」とは以下のもの。
     いずれもSIerの既存事業と親和性であり、追い風になる可能性大
      ・IoT、ビッグデータ、AI
      ・ロボティックス、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
      ・Fintech(フィンテック)
      ・自動運転、モビリティ
      ・クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ    

    ☒各社の現在の取組みは以下のような「立上げのフェーズ」であり、
        業績への貢献は早くても2~3年後   
       ・専任組織の設置
       ・技術革新に強みを持つスタートアップ企業への投資の検討実施
       ・事業やサービスの企画・開発、実証試験

    ☒SIerは自社の強み(業界の業務知識やシステム構築・運用ノウハウ等)
         を生かせる技術革新分野を明確にし、その分野の技術先進企業とアライ
               アンスを組んでビジネスを開発・推進することが必要

 

   ◎課題5:働き方改革への対応(資料P10参照)

    ☒自社の社員の定着と優秀な人材確保のための「働き方改革」の進捗状況
    ・大手は以前から積極的に推進し成果が上がっている(SCSK等) 
    ・中堅はDTSとISIDを除き、概して低調でこれからという段階    
     ☒顧客の「働き方改革」をITで支援する取組みの進捗状況
    ・世の中の「働き方改革」の進み具合に比べると進捗が遅い。
     今後精力的な取り組みが必要(特に中堅)
      【2017年度取組み状況】
       ・RPAのビジネスに本格参入(NTTデータ、DTS、ISID)
       ・自社開発のERPパッケージのソリューションをクラウド提供

                    (SCSK)  
               ・「働き方改革」を支援する新サービスの提供(NRI、CEC)

      【顧客の働き方改革をビジネスにできるSIerの条件】
        ・生産性向上のコンサルとIT化をセットで売り込める
        ・業務効率化を目的としたシステム構築の経験・ノウハウが豊富
        ・ERPでシステム構築が可能
        ・以上のシステムをクラウド上で実現できる

 

 ④各社のベンチマーク~2017年度の経営指標で各社をランクづけ

   ◎成長性の比較

    ☒売上成長性(売上高増加率)(資料P11参照)

       ・ベスト5の大半は大手が占める(大手4社、中堅1社)

    ・全上場企業の平均値7.9%を上回ったのは4社/14社

      ・2年連続で安定して成長しているのは5社
       (富士ソフト、クレスコ、CTC、NSD、NSSOL)

      ・CACHDとSRAHDは2年連続で横ばい

    ☒利益成長性(営業利益増加率)(資料P12参照)                       

          ・ベスト5は大手2社、中堅3社
      2桁の成長は6社/14社

         ・2年連続で安定して成長しているのは4社
      (TIS、クレスコ、NSD、DTS)

      ・SRAHDは横ばい、ISIDとCACHDは大幅減少

 

   ◎収益性の比較

    ☒プロフィット部門の収益性(売上総利益率)(資料P13参照)

                  ・ベスト5の大半は大手が占める(大手4社、中堅1社)
       ※NRI:コンサルビジネスの高い収益性
       ※ISID:自社製品ビジネスの高い収益性   
       ・受託開発ビジネスの収益性は23%を境に大手と中堅に分かれ、
        この傾向は2016年度も同じ

         ・各社の売上総利益率は前年度とほとんど変わらない

    ☒本社・営業の運営コスト(販管費率)(資料P14参照)

       ・ベスト5の大半は中堅が占める(大手1社、中堅4社)
       ※NSD:販管費率7%未満は驚異的        
      ・販管費率は中堅では低く、大手では高くなっている

         ・ISIDの販管費率が高いのは、自社製品の研究開発費が販管費に

        計上されているため
           ・各社の販管費率は前年度とほとんど変わらない

        ☒本業の収益性(営業利益率)(資料P15参照)

                  ・ベスト5は中堅3社、大手2社 

             ・高収益企業の代名詞である「営業利益率10%以上」を実現したのは

                  5社/14社で前年度も同じ顔ぶれ    
      ・営業利益率10%以上の会社の収益構造の違い
            ※大手
          中堅より売上総利益率は高いが、販管費率も高く、結果として10%

                     以上の営業利益率を実現
            ※中堅
          大手より売上総利益率は低いが、販管費率を低く抑え込んで10%

                      以上の営業利益率を実現

        ☒総合的な収益性(純利益率)(資料P16参照)

               ・ベスト5は中堅3社、大手2社        
    ・全上場企業の平均値5.3%を上回ったのは9社/14社で前年度とほぼ同じ

     社数

    ・純利益率は前年度とそれほど変わらない会社が大多数
    (特別損益の影響を受ける会社が少ない)

 

   ◎株主資本の効率的活用の比較
        ☒ROE(資料P17参照)                    

              ・ベスト5は中堅3社、大手2社で高水準
      ※欧米企業は15%前後      
     ・全上場企業の平均値10.4%を上回ったのは7社/14社で前年度より3社減少

       ・2桁以上は9社/14社

 

   ◎株主還元の比較

    ☒配当性向(資料P18参照)                      

      ・トップはSRAHDで60%超(記念配当10円含む)   
        ・ベスト5は中堅3社、大手2社で米国主要企業並み
      ※欧州の主要企業は5割
       米国の主要企業は4割        
       ・全上場企業の平均値30%を上回ったのは11社/14社

     ・前年度より全体的に上昇傾向    

     ・富士ソフト、TISは10%台で極めて低い

    ☒年間配当金(資料P19参照)

        ・トップのSRAHDは100円超   
       ・ベスト5は大手3社、中堅2社で80円以上             
       ・全体的に前年度より増加傾向 

 

2.2018年度業績予想
 ①大手の業績予想
   ◎資料P20参照
 ②中堅の業績予想
   ◎資料P21参照
 ③コメント(資料P22参照)

     ◎2018年度業績予想は、上場企業全体(金融を除く全産業1,566社) 
     では円高、原材料高の影響で最終損益は2%の減益を見込む

    ◎ SIerにはそのような減益要因がほとんど該当しないため、
      最終損益は大手で11.0%、中堅で6.7%の増加を見込む  

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