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2017年8月1日

IT業界の今後の展望

“どうなる!?システムインテグレーター業界(2)”~ACS便りNo.17 

〈季節はずれのコスモス 〉
 
大変お世話になっております。

株式会社ACSの淡路です。

ACS便りNo.172017/8/1)』を送付します。

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7月6日に機関投資家向けIRセミナーで、「システムインテグレーター業界(SI業界)の今後の展望」というテーマで講師を務め、前回からACS便りでその説明を行っております。
今回は2回目として、『過去から引きずる課題の展望~受託開発の構造変化~』についてセミナーで話した内容を記載しますので、下記の資料を参照しながらお読みいただくようお願いいたします。

 【掲載資料】http://acs523.co.jp/news/news_124/

 

受託開発の構造変化 (資料P15~P19)
 ①受託開発の構造変化とは?
  1)SIerの業界団体のJISA(情報サービス産業協会)が、2010年3月(リーマンショックの影響で業界各社の業績が

    過去最低に落ち込んだ時期)に、『受託開発の構造変化への対応(サービス提供型)』に関する提言を行いました。
  2)それは、5年後から10年後つまり2015年から 2020年までに、受託開発の業界構造と、顧客と業界の関係が大きく変化

    することに対して、SIerに戦略的対応を促すものでした。この背景には、2006年にクラウドが日本で世に出たこと

    もありました。
  3)提言の具体的な内容は、お客様が、システムを「作る」から「使う」にパラダイムシフトする ことで、システムがサービ

    ス提供型にシフトし、 受託開発の比率が大きく減少する。その結果、ソフトウェアプロダクトやBPO、ITサービ ス

    (SaaS/ASP)といったアウトソーシング サービスが拡大する。

    このような構造変化を前提にして、サービス化に対するユーザーの理解を深め、サービス化の人材(スキル)を発掘・

    育成し、人月ビジネスから脱却してサービス・製品を構築すること等をSIerに促すアクションプランでした。

 

 ②業界各社の動き
  業界各社は、この提言を受け、中期経営計画で過去最高業績までの回復を目標に掲げ、受託開発の構造変化への対応(以下、

  サービス化)を重点施策と位置づけて着手したものの、眼に見えるような進展はありませんでした。

 

 ③サービス化が進まない原因
  サービス化が進まなかった原因としては以下の二つが考えられます。
  1)クラウドの普及の遅れ
   前述したように日本では、クラウドが入ってきた2006年から「基本の確認フェーズ」を10 年間も続けており、日本でのクラ

   ウド普及のスピード(クラウドの採用率)は年間1%と相当穏やかだったため、サービス化に対する顧客のニーズがそれほど

         高まらなかった  
       ※「基本の確認フェーズ」とは、以下の基本的な内容を確認する段階のこと
        ・どのクラウドを選べばよいのか
        ・コストはどうか
        ・どの業務システムをクラウドに移行できるのか
        ・セキュリティは大丈夫か  
  2)受託開発の受注環境好転
      2014年度と2015年度は、金融機関のシステム統合案件等により需要が拡大し、市場成長率 が3%超。SIerは目先の需要増

    への対応に追われ、サービス化対応は一端棚上げ。( 「サービス化の進展=受託開発の機会喪失」というトレードオフの関

          係なので、受託開発の需要増の時期にSIerの経営トップがサービス化の方向に舵を切ることは困難)

 

 ④JISAの再度の提言
  JISAは2016年6月に再度、「新たなビジネスモデルの創造に向けた改革への取り組み~サービスビジネスへの挑戦事例」

       という提言を公表しました。その内容は、挑戦事例を示してサービス化を強力に促す他、SIerのサービス化が進捗しない

     現実を踏まえ、前回より相当踏み込んだ内容となっております。

   提言内容は以下のとおり
   1)「受託開発型からサービス提供型への転換」についてベンダ起業トップがコミットメント
   2)サービス提供型を推進する人材の評価基準や評価プロセスを明確化
         3)サービスのメニュー化を推進し、人月モデルとは異なる価格体系の構築
         4)サービスを継続的に自律進化させる知識 集約型の活動推進
     5)中堅中小企業におけるサービス化の取り組み

 

 ⑤サービス化の本格的推進
  最近、SIerがサービス化に本腰を入れざるを得なくなるような、顧客の大きな動きがありました。
  1)三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)が国内メガバンクで初めてパブリッククラウド「AWS(Amazon 

             Web Services)」を採用(2017年1月)

             ☒注目すべき点
       ■400を超える社内システムのうち200以上がパブリッククラウドに移行可能。
                    勘定系システム等の基幹システムは当面計画外であるが、将来的にはクラウド化する可能性は十分あり
       ■クラウド化の狙いは5年間で100億円規模のコスト削減とフィンテック分野への迅速な対応
         ■MUFGが「クラウドファースト」に舵を切ったので、これに追随する銀行が現れる可能性大
               ■最高水準のセキュリティが要求される銀行業界のAWS採用は、クラウドにつきものの、 「漠然としてセキュリティ

          への不安」を払拭する効果が絶大で、クラウドの普及にはずみがつく可能性大


      ☒SIerの競争原理の変化
        ■SIerには、AWSやMicrosoft Azureという大手クラウド事業者の技術に精通した人材やノウハウが求めら

                      れ、これに対応できないと、金融機関等のクラウド上のシステム開発の土俵に上がれなくなる
                                    ※AWSのコンサルティングパートナー
                                     ・プレミアム:NTTデータ、TIS、NRI
                                       ・アドバンスド:CTC、SCSK、CAC、 ISID、富士ソフト
                                         ・スタンダード:クレスコ、CEC、NSSOL
                 ■クラウドのメリットは大幅なコスト削減であるが、クラウド上のシステム開発は従来の受託開発の手法ではコストが

                      高すぎて対応できない。クラウドとのつながりが良いPKGソフトの開発が得意なSIerが有利になる


  2)技術革新で誕生する新サービスは「クラウドファースト」を加速
         IoT、ビッグデータ、AI、フィンテックといった技術 革新で誕生する新サービスは「クラウドファースト」の考え方を加速

    し、顧客企業のクラウドへの取り組みを次のステージに押し上げることが予想される

 

⑥結論
 メガバンクで始まったパブリッククラウド採用の動きは、製造業をはじめとする他業界に広がりを見せることが予想され、

 受託開発の構造変化は、クラウド化の進展のスピードに合わせる形で現実のものになっていくと思われます。  
 このような環境変化への対応として、サービス化というビジネスモデルの変革にいち早く舵を切り、これを成し遂げたSIer

 (業界各社はいずれも現行の中期経営計画で表現の違いはあってもこのテーマを掲げている)だけが勝ち残っていける

 そんな時代になったことを痛感します。

 

【ビジネス豆知識】 今回はお休みします。 

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(acs523.co.jp/news/news_128)(acs523.co.jp/news/news_96)(acs523.co.jp/news/news_62

                                                                                     以 上

 

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