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2017年5月1日

企業の成長過程における経営課題6:M&Aによる事業承継~ACS便りNo.11

 

 

〈横浜どうぶつ園 里山ガーデン〉 

大変お世話になっております。

株式会社ACSの淡路です。

ACS便りNo.112017/5/1)』を送付します。

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中小企業の大半の経営者は、前号のACS便りで扱った「株式上場」をめざすのではなく、非上場の道を選んで真摯に業績向上と社員の雇用確保に取り組んでいます。そして誰もが一定の年齢になると、手塩にかけて育てた会社の事業承継の問題を避けて通ることができなくなります。家族や社員の中に後継者がいない場合、以前なら廃業せざるをえませんでしたが、最近は事業継承の手段としてM&Aが活用されるようになりました。

そこで今回のACS便りでは、企業の成長過程における経営課題への対応として、『M&Aによる事業承継』を取り上げます。M&Aで会社を売却する側に立ち、MAのプロセスに沿ってその留意点を説明します。

 

1.M&Aの事前準備

   ①M&Aアドバイザーの選定

       ☒ M&Aアドバイザーとは、M&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までのコーディネートを行うM&Aの専門家。

           フィナンシャル・アドバイザー(FA)とも呼ばれ、M&A仲介会社、金融機関(地銀、信金、中小証券会社等)、会計・税

           理士事務所等がその役割を担っている

       ☒ 中小企業のM&Aは友好的に進めることが多いので、売り手と買い手の間に立って中立的な立場で助言する「仲介形式」のアドバ

            イザーがいないと上手くいかない。M&Aアドバイザーはこのような仲介を行う

     ☒ M&Aアドバイザーは幅広いネットワークで売却先を見つけることができる

               ※売却先は通常、売却対象会社より規模が大きく、上場会社のケースもある。また、全国から売却先を見つけてくるため、M&

      Aのネットワークを持っていない経営コンサルティング会社では対応できない

     ☒ M&Aアドバイザーが行う業務は次のとおり

                 売却先の発掘、売却先の情報の収集と売り手への提供、売却基本スキームの策定、バリエーションの算定、戦略構築、買収提

                    案資料の作成、スケジュール作成、契約書等のたたき台作成、条件交渉、M&Aの実務手続の助言

       ☒ M&Aの成功は、経験豊かで信頼のおけるM&Aアドバイザーを選定できるかどうかにかかっている。 M&Aアドバイザーと

           してどこを選定すればいいのかお悩みの方は、お気軽にACSにご相談ください

 

   ②売却先候補企業の発掘と売却先の選定

       ☒ 売り手は、M&Aアドバイザーに対して、決算書・法人税申告書・中期事業計画書・直近の月次試算表・ 組織図等の資料を提供

     するとともに希望する売却条件(売却希望価格を含む)を伝え、売却先の選定を依頼

       ☒ 財務関連資料は最低3年分、可能なら5年分のデータを提供。買い手は節税対策前の利益の把握や不審企業からの借入金の有無等

            を分析

       ☒  M&Aに関する機密保持の徹底は極めて重要。これができないとM&Aは頓挫する

 

2.M&Aの実施

   ①売却先の情報収集と売却スキームの選定

    ☒ M&Aアドバイザーから売却先候補の概要や必要な情報を入手し、売却先としての妥当性を検討      

      ☒  売却先選定のポイントは、買収する会社がどれだけ自分の会社を大切に思い、満足できる事業方針の下で事業の継続・発展や従

           業員の雇用確保が行われるか、また、売却価格が満足できるものかである

    ☒  売却スキームとして「株式譲渡(株式を100%譲渡)」か、「事業譲渡(複数の事業の中である事業を譲渡)」 を選択

 

   ②バリエーション

       ☒ バリエーションとは企業や事業の価値算出作業のこと。M&Aアドバイザーに自社のバリエーションを依頼し、売却希望価格の目

            安を把握する(このプロセスを真っ先に行うケースもある)

       ☒ バリエーションの手法

           ■時価純資産法

                貸借対照表の純資産を企業評価額にする方法で土地・建物は時価評価

           ■DCF法

                将来の収益見通しを現時点での価値に置き直して企業評価額とする方法

           ■類似上場会社比較法

                上場している同業の株価を参考にして企業価値を類推する方法

 

          中小企業は上場企業と違って市場価値の算定が困難、中期事業計画の計画値の根拠が希薄等の理由から 実務的には時価純資産法を

       ベースにして5年分の当期純利益を「のれん代(営業権)」として上乗せすることが多い

             ⇒売り手は予めこれを算出して売却希望価格を検討することが必要

 

  ③トップ面談と条件交渉・詳細検討

       ☒ 交渉の基本スタンスは、売り手も買い手もWin- Winの関係になるように信頼関係を構築すること。

            そのために相手の視点を持ち、相手のメリットやゴール(目的)について考えることが肝要

     ☒ 売り手はトップ面談では買い手の質問に対して嘘はつかず、わからないことは後日M&Aアドバイザーを介して回答する。

            売買金額等の条件交渉はトップ面談ではせず、M&Aアドバイザーを介して行う

     ☒ M&Aの交渉項目は以下のとおり

           売却価格、納得できる事業方針の下での事業の継続・発展、従業員の雇用確保、売り手が売却後に会社に残る期間、引き継ぎ、

              売却時期、支払条件、協業避止、個人保証を外す時期、退職金の支払時期、買収スキーム、キーパーソンの継続勤務意思、売却

              後の元代表者の処遇(顧問就任?)、許認可関係の継続、顧問税理士等の継続、個人・リース・賃貸借契約等の連帯保証問題等

 

  ④意向表明と基本合意書(LOI)の締結

      ☒ 意向表明書とは、売却方法、売却価格(いくらから いくらと幅を持たせるのが通常)等の条件が書かれた資料で買い手がM&Aア

          ドバイザー経由で売り手に交付するもの。買い手の本気度を売り手に伝えるためのもの。法的拘束力はなく買い手の機関決定を経

      たものでもないのでその旨を記載。さらに今後の交渉等で条件が変化しうることも記載。この手続は必須ではなく省略される場合

          もある

      ☒ 意向表明が受理されて買い手の絞り込みが終わり、重要な条件(売却価格の目安、売却の時期、スキーム等)が決まったら基本合

           意書(LOI)を締結する。 独占交渉権、秘密保持契約、裁判所管轄等だけ法的拘束力を持たせる。この手続も必須ではなく、省略

           される場合がある

 

  ⑤デュー・デリジェンス(買収監査)の実施

      ☒ 買い手は売り手から入手した情報が正しいものと思って交渉を進めるが、買い手が専門家(弁護士、会計士、税理士等)とともに

      これらの情報が正しいかをチェックしてリスクを把握することをデュー・デリジェンス(買収監査。以下DD)という。

         DDには、ビジネス、財務、法務、税務、技術、環境、IT等があるが、最低でも以下のDDが買い手によって実施されるので、売り

         手は全面的に協力する。 

               ■ビジネスDD=中期事業計画の妥当性を精査

               ■財務DD=売り手の財務諸表とバリエーションの基礎になる情報が適正か精査

               ■税務DD=過去の税務申告で将来追徴課税されるリスクがないか精査

               ■法務DD=売り手の締結している契約で買収後に不利になったり、M&A実行の障害になる問題の有無を精査

 

  ⑥最終譲渡契約書の締結とクロージング(決済)

         ☒ DDが終了し、売り手・買い手双方の意思や条件が固まったら最終譲渡契約書を締結

         ☒ クロージングとは、株券等の重要書類引き渡しと売却代金の支払を受ける、MAの最終段階の手続

               ※中小企業の場合、株主名簿がアップデートされていなかったり、株券を紛失していたり、発行していないケースが多い。

                      株券を発行すべき会社で株券を発行していない場合は、買い手の意向を確認して株券を発行するか、定款を発行して「株券

                      発行会社である旨」の登記を廃止する

       ☒ 中小企業の株式は譲渡制限株式なので、売り手の社長が株式を譲渡するには取締役会設置会社では取締役会の譲渡承認が、それ

               以外の会社では株主総会での譲渡承認が必要 

 

3.M&A実施後のPMI

         ☒ PMIとは、M&A後に当初計画した企業価値を創造するために、買い手が組織統合マネジメントを推進していくプロセスのこ

              と。これが上手くできるかが買い手側のMA成功のポイントになる

 

4.M&Aの所要期間

         ☒ M&Aは一般的には3か月~1年かかる。売り手と買い手の候補がマッチングできていれば36か月で終了

         ☒ M&Aによる事業継承は予めその時期を決めておき、準備を進める(売却価格を高くするために、好業績を持続して純資産

             を極大化)ことがポイント。

             M&Aは一気呵成に実施することが必要(できたらやるというスタンスではM&Aはできない)

 

(注)【ビジネス豆知識】は今回もお休みします。

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🔶今後のACS便りのテーマ(予定)

   5月、6月は、3月決算会社にとって6月の株主総会準備で忙しくなる時期なので3回にわたって株主総会の運営をテーマにす。

            ・515日配信 『株主総会の運営(1)』 ~基礎編~

            ・6 1日配信  『株主総会の運営(2)』 ~実務編~

            ・615日配信 『株主総会の運営(3)』 ~直前対策編~

🔶ACS便りは月2回(1日と15日)配信しています。内容についてご意見があれば遠慮なくご連絡願います。 

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🔶弊社ホームページの新着情報に、弊社のビジネスを一層理解していただくために『受注情報』(acs523.co.jp/news/news_96

 (acs523.co.jp/news/news_62)を掲載しています。また、『ホームページの分析結果』(acs523.co.jp/news/news_89)も掲載してい

   ますので併せて ご覧ください。 

 以 上

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