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2017年3月1日

 

企業の成長過程における経営課題2:管理会計制度の導入~ACS便りNo.7

 

大変お世話になっております。株式会社ACSの淡路です。

ACS便りNo.72017/3/1)』を送付します。

企業の成長過程における経営課題への対応についてシリーズで記載していますが、今回のテーマは『管理会計制度の導入』

です。前回のACS便りで、スタートアップ企業が「どんぶり勘定」の事業運営から脱却するには「管理会計や年度の業

績管理・予算管理制度が必要である」と書きましたが、そのうちの管理会計の導入が今回のテーマです。

なお、以下の内容は概ね製造業を想定しています。

□ □ □ □

1.管理会計とは?

 ①会計の種類

  ・会計には「財務会計」と「管理会計」の2種類(税務会計は省略)があり、経営マネジメントで重要なのは管理会計

        と言われています。

   

         ■財務会計 

         会社が行った企業活動を適正に外部(株主・投資家、債権者、取引先、金融機関等)に対して、法律(会

         社法、金融商品取引法)に定められた財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)の様式で報告するための

         会計制度

        ■管理会計

           会社が意思決定、業績評価、コスト管理等の経営マネジメントを行うことに必要な数値情報を提供する

               ための会計制度。法規制は一切なく、自由に制度設計できる、任意の会計制度

 

 ②財務会計と管理会計の違い

  ・ふたつの会計制度ではアプローチが異ります。例えば売上高の内訳データとして、財務会計では事業セグメント別

   までで十分ですが、管理会計では会社の必要に応じて、さらに業種別、顧客別までの詳細なデータが必要になります。

 

2.管理会計はなぜ必要?

 ①企業の日常的なオぺレーション

  ・企業の日常活動で求められるのは、『年度目標の利益確保』です。そして、そのためのオペレーションとして次の

   2点に取り組むことになります。 

         ■営業活動を強化して売上高を拡大し、利益を伸ばす

             ■売上原価と販売費・一般販管費(以下「販管費」)というコストを削減し、利益をさらに上乗せする

 

   ②目標利益が確保できない理由

        1)年度目標を立てるときに予想した事業環境は、世界や日本の経済状況、自社製品・サービスの市場・顧客の動向、競合

      相手の戦略等で変化していくので、これらの変化にどう対応して、年度目標の利益を確保するかが問われることになり

      ます。企業が『環境対応業』と言われる所以です。

        2)管理会計は全ての会社にとって必須の重要なインフラですが、中小企業では管理会計が導入されず、財務会計の月次決

      算だけで業績をチェックしている会社が少なくありません。そのため、事業環境の変化に対応して打つべき対策が後手

      後手に回り、その結果、目標未達の現実を受け入れざるをえなくなってしまいます。

 

   ③赤字が回避できない理由

     1)さらに問題なのは、『損益分岐点売上高』(会社の今のコスト構造で経常利益が0になる売上高。詳細は後記の   

      【ビジネス豆知識】参照)をつかんでいないため、売上高がいくらを切れば赤字になるかが予測できず、黒字化対策と

        してコスト削減が適時にできないということです。

     2)このような状態では目標の利益どころか黒字を確保することも構造的に難しい状態になっています。

            売上が伸びているのに利益が思うように出ない会社のインフラ上の課題は、『自社に適した管理会計制度の導入』です。

     ※『自社に適した管理会計制度』とは、管理の精度を上げることとそのために投入するリソース(ヒト)の

       バランスを考慮して自社の身の丈にあった、シンプルで定着しやすい制度設計をすることが肝要です。

      (特に原価管理制度)

 

 3.管理会計制度導入のポイント

 ①全 体 

        1)ビジネスの収益単位の設定

          ・事業特性(ビジネスモデルや収益性)等により事業セグメントを設定

            ・事業セグメントの内訳の収益単位として、製品別・サービス別等を設定

    2)組織としての収益管理単位の設定

                ・工場別、事業所別、グループ会社別等

    3)経営マネジメントに必要な管理項目や管理指標の選定と目標値の設定

               ・年度収益管理の目標値は売上、費用、利益の金額で設定。 粗利益率、販管費率、営業利益率等の指標は金額目標の

                   根拠や二次的な目標として位置づけ

               ・業績変動や予算未達の原因がつかめるもの、プロセスを評価するものを選定

             ・項目数、指標数が多くなりすぎないように絞り込む 

 

   ②売上高

        ・案件(引き合い)の量と質(受注確度)を週次で管理し、月次や3か月先の売上予算が達成できるかチェック。           
             案件量の不足や受注確度アップについて施策を実施して結果をフォロー
 

   ③原 価

        1)売上原価の総額管理は、売上原価率(=売上原価/売上高×100)を時系列や同業他社・業界平均と比較し、適正な水準

             で設定

        2)売上原価を管理する原価管理制度を構築し、製品別・サービス別に材料費、労務費、製造経費等の原価を把握して

        コストを適正化する対策を実施

 

  ④販管費

        1)販管費率(=販管費/売上高×100)の時系列比較や同業他社・業界平均と比較して適正な水準を設定

        2)販売費は営業効率の観点でコントロールし、一般管理費は予算外支出の有無と金額の管理がポイント  

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【ビジネス豆知識】

       ◎損益分岐点分析

        ・会社の費用を、売上高の変化に応じて変動する費用の「変動費」と、変動しない費用の「固定費」に分解し、「損益分岐点       

       売上高」(利益が0になる売上高)を算出。さらにこれと実際の売上高の比率である「損益分岐点売上高比率」も算出

            (変動費、固定費の分解は厳密に行うと時間がかかるので勘定科目毎に判断しても可)

        ・売上高が減少している事業を再生するためには、損益分岐点売上高(比率)を引き下げることが必要であり、そのために

               コスト(変動費と固定費)をどこまでどうやって下げるかを分析する手法

       ・下記の計算式を使って自社の損益分岐点分析をしてみてください。

               限界利益率(%)=(売上高-変動費)/売上高×100

                 損益分岐点売上高=固定費/限界利益率

                 損益分岐点売上高比率(%)=損益分岐点売上高/実際の売上高×100

                       ※中小企業の製造業平均は91.1%(中小企業庁の平成27年「実態調査」より)

 

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以 上

                                                                                                                                               

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