新着情報 NEWS

2018年10月1日

品質管理の基礎研修(2)『工程内の品質作り込み』~ACS便りNo.32

 

〈横浜どうぶつ園 ズーラシア〉

 

大変お世話になっております。株式会社ACSの淡路です。

ACS便りNo.32(2018/10/1)』を送付します。

 

□ □ □ □

 今回は、製造業の中小企業を対象にした『品質管理基礎研修』の2回目として、『工程内の品質作り込み』と

いうテーマで、『製造部門の工程内の品質作り込みと検査部門の検出力の維持・強化』について解説します。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇『工程内の品質作り込み』◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

1.品質不良
 ①良品・不良品の定義

   ☒お客様と契約した品質基準を満たした品質の製品を「良品」、満たしていない品質の

      製品を「不良品」という

      ※社内の品質基準を満たしていても、お客様と契約した品質基準を満たしていない

      ものは「不良品」。昨今の品質不正問題は、この「不良品」の品質データを書き換え

                て「良品」に見せかけたもの  

 ②品質不良の種類

    「外部不良」「内部不良」の二種類あり

    ☒「外部不良」とは、出荷検査で不良品が検出できずに出荷され、市場に出てしまった

         もので「クレーム」ともいう。

     外部不良」の対応には多大の時間と手間がかかるだけでなく会社の信頼にも悪影響

      を及ぼし、社員の士気も低下してしまうため、撲滅(0にすること)が目標

                  「外部不良」を撲滅するための主な対策は、今回のテーマのポイントの『検査部門の

        検出維持・強化』

       ☒「内部不良」とは、社内の検査(出荷検査や工程内検査)で発見された不良品で、

        「工程不良」とも言われ、不良品は手直しするか廃棄して作り直す

         内部不良」は社内で処置するため「クレーム」と違ってお客様にはわからないが、

                     会社にとっては手直しや作り直しによる材料費や労務費等の損失が発生してしまう

       ため、大幅な減少または撲滅が目標

                 ■「内部不良」を大幅に削減するための主な対策は、今回のテーマのポイントの『製造

          部門の工程内の品質作り込み

   ③品質不良のデータ管理

     ☒「外部不良」の管理データ

     ※管理データ:目標値として設定し、実績を把握してその差異を分析し、目標達成の

                   ための対策を検討・実施するためのデータ

      ■顧客・市場からのクレーム件数

    ■クレーム対応コスト(クレーム対応に要した総コスト)

                    クレームの処置に要した工数・材料費、別便でクレームを処置した製品を発送した場合

       の運送費、出張して対応した場合の費用、品質管理部門の再発防止策の検討実施の工数

       等、顧客・市場への謝罪と再発防止策説明の工数等

   ☒「内部不良」の管理データ

     以下の指標の他に、業種の特徴や各社の実情に応じて独自の指標も設定すべき

     ■不良率等

     ・不良品を廃棄する場合の指標

       「良品率(直行率)」=良品の数の割合(%)

       「不良率」=不良品(廃棄品)の数の割合(%)     

     ・不良品を手直しする場合の指標

          「直行率」=一発で良品として出てきた数の割合(%)

          「良品率」=一発で良品として出てきた数と、手直しして良品になった数を

             合わせた割合(%)

       「不良率」=一発目に不良として出てきた数の割合(%) 

     ■手直し・作り直しコスト

      手直し・作り直しに要した工数・材料費等

       ※「手直し・作り直しコスト」と上記の「クレーム対応コスト」を合せて 

       『後向きコスト』と呼ぶ

 

2.製造部門の工程内の品質作り込み

 ①工程内の品質作り込み

   ☒定義

       『工程内で品質を作り込む』とは、品質の悪いものは作らない、次の工程に流さない

    という「自工程完結」の考え方をベースに、品質の良いモノを作るために決めらた、

    各工程の管理項目、管理基準、管理方法どおりに日常管理し、それらを満足するよう

    に決められた作業方法どおりに作業してモノ作りを行うという製造部門の取り組み

   ☒製造部門の日常管理

        ■製造部門は、品質の良いモノを作るため、製造プロセス、作業方法、工程内条件、
    品質確認、設備保全等(管理基準項目や異常発生時の処置方法等も含む)を定め、
    それらを「QC工程表」(ひとつの製品の原材料・部品の購入から完成品として
    出荷されるまでの工程の各段階での管理特性や管理方法を工程の流れに沿って
    記載した表)に記載して日常的に管理。
    また、「QC工程表」の管理項目や管理基準を満足するように、それぞれの工程
    の作業方法を「作業標準書」にまとめ、製造現場では「作業標準書」を見て作業
    を行う。
   ■製造現場の日常管理は、以下のふたつの要素に分けられる   
    自工程完結(不良を作らない流さない)
            設備や作業に異常があったらすぐに検知し、不良になる前段階で処置して不具合
     製品を作らない。また、適正な検査で不具合を流出させない 。製造現場の作業者

     は、具体的には以下の行動をとる 

 

        1)前工程から不良品を受け取らない

             「作業標準書」に記載された「品質のチェックポイント」に基づき、前工程

       から流れてきた不良品を除去

      2)自工程で不良品を作らない

       「作業標準書」に記載された「作業手順、作業方法等」に基づき、作業を

       確実に実施  

      3)後工程に不良品を送らない

          「作業標準書」に記載された「品質のチェックポイント」に基づき、作業者が

       自主点検を実施(※)

         ※この解説では、製品が完成に至るまでの工程内検査は、工程内に専任の

        検査員を配置するのではなく、工程の作業者自らが検査(自主検査)する

        場合を想定

     
    ・変化点管理
     変化点とは、製造工程でバラツキを生じさせる4M(※)が変化する時のことで
            あり、事前に分かっている項目と突発する項目に分け、対応方法を設定して管理
            することを変化点管理という


                     ※4Mとは、モノ作りに必要な材料、機械、作業者、作業方法の4要素
                          を英語の頭文字Mで表現したもの
        1)Material(材料や部品)の管理
          受入検査等で使用する材料や部品の品質を確認してバラツキを管理
        2)Machine(設備や機械)の管理
          設備や機械の精度を校正(精度・機能・動作・誤差の確認)して設備                                                           や機械での製造を保証
       3)Man(作業者)の管理
          現場の作業者の技能を訓練して生産工程で品質を作り込み
        4)Method(作業方法)の管理
             品質の良いモノを効率良く生産する作業方法を検討し、作業標準書に
                              まとめて実践
                                     

      ☒製造部門以外が行う品質確保  

         ■設計部門

               設計部門は、製品製作の上流である設計段階で品質不具合を未然に防止するため、

             不具合を発生させない部品形状や製品構造について製造部門からの提案を図面に

             反映⇒図面どおりに作れば、品質の良いモノができる    

        ■生産技術部門

               生産技術部門は作業導線、部品・設備配置、物流を含めた全体レイアウトの変更

          にあたって、過去の不具合を考慮し、不具合流出防止のための設備的な対策

          部品セット方法・流し方を設備仕様に反映

          ⇒設備の使用条件を守れば、品質の良いモノができる

 

3.検査部門の検出力の維持・強化

  ①検査の役割

    ☒検査の三つの役割  

      検査基準に従い、製品の品質の合否判定を行って不良品を除去

     ■品質管理上必要な検査記録を残す

     ■検査記録を前工程にフィードバックすることで、外部不良と内部不良の再発防止に

              役立てる

 ②検査の種類

   ☒検査対象による種類

      ■受入検査

     ・購入した材料や半製品が入庫された際に行う検査

         ・受入検査は顧客の立場で行う検査なので、品質は原材料メーカーや半製品メーカーに

               保証してもらうことが基本。特に品質をしっかり保証してもらう必要のあるものは、

         出荷検査の方法や検査基準について双方合意のもとで「購入仕様書」を作成し、納品

                時に現物と一緒に「出荷検査成績表」を添付させる

     ・入荷時には、品番と数量は伝票と現物で確認し、品質は「出荷検査成績表」で確認     

    ■工程内検査

     ・完成に至るまでの工程間で行う検査で、工程間に専任の検査員を配置する場合と

        工程の作業者が自ら検査する場合があり、後者を「自主検査」と呼ぶ。

        この解説では自主検査を想定

     ・この検査の目的は、内部不良による手直し、廃棄、作り直しのコストの最小化      

    ■出荷検査(完成検査)

     ・不良品が市場に流出すること(外部不良〔クレーム〕の発生)を防ぐための検査

     ・出荷検査は品質の最後の関所であり、ここの不良の検出力が弱いとクレームが頻発

       してしまう⇒出荷検査の検出力の維持・強化は製造業各社に共通する重要な課題

     ・出荷検査だけでは不良がどの工程で発生したのか特定できず、再発防止が困難

       ⇒受入検査や工程内検査が行われるようになった

   ☒検査個数による種類

     ■全数検査  

      ・全ての製品をひとつずつ確認して合否判定する検査

      ・品質確保の観点からは理想であるが、検査のコスト・時間がかかる   

     ■抜取検査

      ・製品を一定の基準に基づいて抜き取り、合否判定する検査。

       次のふたつの抜き取り方法がある

       1)定間隔

            例えばロットの最初の1個、中間の1個、終わりの1個を抜き取り、

         中間の1個が不合格であれば、最初の1個から中間の1個までの

            全数検査を行い、不良品を除去して予防を行う    

            2)ランダム

              ロットの中から、統計学に基づいた個数を無作為に抜き取り、これを

          検査して合否を判定。不良品が定められた基準個数以下の場合はロット

              の全てを合格とし、基準個数以上の場合はロットは不合格。

              不合格のロットは全数検査を行い、良品のみを次工程に流す      

     ■間接検査

      ・受入検査でメーカーが実施した検査結果を確認するもので、購入側の検査を

        省略。上記の「出荷検査成績表」で判断

     ■無検査

      ・意図して検査しないこと。信頼性が高い場合や次工程に流れても影響しない

      場合に採用

   ☒検査方法による種類

     ■測定器検査

       ・測定器を使用して品質を判定する検査

       ・測定器で正しい計測精度を維持するための作業を「校正」という。

      測定器検査を正確に行うためには、「校正」を定期的に実施することが不可欠  

     ■官能検査

     ・人の五感(目視、打音、味覚、臭気、触覚)を使って品質を判定する検査

     ・官能検査の採用理由

        1)検査基準として数値化が困難

         2)測定器での測定は可能であるが、測定器が高価であったり、測定に

                       時間がかかる

                       3)測定器より人の五感の検出精度の方が優れている

     官能検査の問題点は、検査員が異なる場合や同じ検査員でも体調等によって

      合否判定にバラツキが生じること

         ⇒対策は、検査手順の明確化、「限度見本」(※)による合否判断、

       教育・訓練の徹底

        ※限度見本とは、ある製品を品質上合格とするか、不合格にするかの

           限度を示した製品見本。

         合格か不合格かの境界がわかりにくい官能検査には必須の検査ツール

 ③不良検出力の維持・強化

  ☒ソフト面 

   ・上記の検査の種類や内容等を踏まえ、当社製品に最適な検査の対象・内容・方法・

    基準・記録等を設定し、これらを出荷検査の場合は検査員の検査作業標準書に、

    工程内検査の場合は現場の各工程の作業標準書にそれぞれ反映。

    標準書の内容の見直しや追加がある場合は常にアップデート

     ☒ハード面

   ・良品の検出力を維持・強化するため、検査の測定器や検査設備に関する投資は

    惜しまない。また、検査員の要員は必要数をしっかり確保

         ※昨今の品質不正問題は、利益優先でコストを抑制するため、検査設備の投資を

         控えたり、検査要員の不足を放置していたことで発生    

 □ □ □ □
🔶ACS便りは毎月1日(1日が休日の場合は前営業日)に配信します。
   内容についてご意見があれば遠慮なくご連絡願います。
🔶メルマガの配信停止をご希望の方は、お手数ですがその旨のご返信をお願いいたします。  
 
                                                                                     以 上
新着情報一覧