2018年8月31日
品質管理の基礎研修(1)『品質管理入門』~ACS便りNo.31
〈追分市民の森 ひまわり畑〉
大変お世話になっております。株式会社ACSの淡路です。
『ACS便りNo.31(2018/8/31)』を送付します。
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『品質不正』が日本を代表する大手製造業で立て続けに発覚し、日本のモノ作りの危機が叫ばれています。企業で起きた問題を全てコーポレート・ガバナンスの問題と捉える最近の風潮から、『品質不正』もガバナンスさえよくなれば解決できるようなニュアンスで伝えられることに私は強い違和感を感じています。
どのような業種の会社でも、企業活動の基本は、お客様が製品やサービスに求めるQCD(Q:品質、C:コスト、D:納期)の三つをバランスよく提供して顧客満足度を高めることです。業績向上のためにDやCを優先してQを軽視するようなことは絶対にあってはなりません。この話を社内に浸透できない会社はそもそも企業活動を行う資格のない会社であって、ガバナンス以前の問題だと考えています。
さて、クライアントから『品質管理の基礎研修』のオファーをいただき、2000年に製造業の会社を辞めて以来、久しぶりに品質管理の勉強をして以下の2点に気づきました。
(1)2000年以降に日本の製造業の品質管理活動が弱体化したことが、昨今の品質不正の背景になっている。
(2)改めて品質管理の発想や手法がどのような業種や職種の仕事でも使うことができる。(例えば業務プロセスの改善やデータ分析による改善・対策立案等)
今回から3回に分けて、私がACSで実際に行っている『品質管理の基礎研修』を掲載します。1回目は『品質管理入門(品質管理とは何か)』、2回目は『工程内の品質作り込み』、3回目は『品質改善の進め方』であり、研修の対象は製造業の中小企業を想定しています。
皆様にはご自身の仕事にQC手法を活用することを強くお勧めします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇『品質管理入門』◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1.品質管理の概要
①品質
☒定義
・品質とは、お客様が要求する、モノやサービスの特性や性能のこと
・モノの品質を『ハードの品質』、サービスの品質を『ソフトの品質』と呼ぶが、
以下は『ハードの品質』を対象に説明
☒種類
・「メーカーが提供する製品の品質レベル」と「お客様が製品に要求する品質レベル」
を比較した結果により品質には三種類あり
・前者と後者が等しい場合を『適正品質』、前者の方が高い場合を『過剰品質(コスト
アップ)』、前者が後者に達していない場合を『品質不良(クレームや作り直し)』
という。 われわれがめざすのは、当然『適正品質』
②管理
☒定義
・管理とは、『管理のサイクル』を回して組織や個人の目標を効率よく達成すること
※管理のサイクル(PDCAのサイクル)
P(Plan:計画を立てる)、D(Do:計画を実行する)、C(Check:計画した
目標と実行した結果の差をチェックする)、A(Action:差を埋める改善をする)
というステップで構成されるサイクルのこと。特にCとAのステップが重要
③品質管理
☒定義
・品質管理とは、『管理のサイクル』を回して、お客様の要求する品質を経済的に
提供する活動であり、営業~購買~倉庫~製造~品質管理~出荷という、生産に
関わる全ての部門で行う業務である
☒取り組む理由
・「品質管理活動によりお客様の要求品質を満たす⇒会社の業績向上⇒社員に対する
適切な還元(賞与等)の実施⇒社員の満足度向上」というサイクルを回すために
品質管理活動に取り組む
☒目標
・品質管理活動の目標は以下の3つ
(1)クレームの撲滅
・撲滅とは0にすること。品質不良は絶対に社外流出しない
・信頼は築くには長い時間がかかるが、信頼を失うのはたったひとつのクレーム
(2)品質不良による製品の廃棄や作り直しの大幅削減
・作り直しはムダのかたまり(作業時間のムダ、材料費のムダ、物流費のムダ)
(3)社員、アルバイト・パート・技能実習生等の全従業員の品質意識の高まり
・社員だけではなく、非正規社員の品質意識も向上
・データでものを言う習慣を身につける
2.各部門の品質管理活動
①品質管理部門
☒製品品質の維持向上
・生産工程での品質の作り込みや検査の検出力の実態を常に把握し、問題があれば改善を
要請してその実施状況を確認
・得意先クレームや社内で発生した重要な品質不良について、発生部門とともに発生原因
や改善内容を検討・実施し、必要な水平展開を実施
☒品質管理体制の構築と改善
・品質管理活動の年度計画の策定・推進
・品質文書の作成管理
②製造・検査部門
☒製造部門の工程内の品質作り込み
・QC工程表、作業標準書、限度見本等のツールに従い、作業と品質自主点検を実施
・工程内で品質を作り込むために必要なこと
(1)前工程から不良品を受け取らない
作業標準書に明記された品質のチェックポイントに基づき、前工程から流れて
きた不良品を除去
(2)自工程で不良品を作らない
作業標準書に明記された作業手順、作業方法等に基づき、作業者が確実に作業
を実施
(3)後工程に不良品を送らない
作業標準書に明記された品質のチェックポイントに基づき、作業者が自主点検
を実施
☒検査部門の出荷検査の検出力の維持・強化
・クレームを発生させないために、品質の『最後の関所』として、定められた検査の
項目・内容・方法・記録・基準等で検査作業標準書に記されたものに従い、検査を
確実に実施して品質不良の情報を関係部門(製造部門、品質管理部門等)にフィード
バック
☒慢性不良の低減
・品質部門と連携し、データとQC7つ道具等を活用して、品質の慢性不良の原因の把握、
対策の実施、効果確認、作業の標準化と歯止めを行う(QCストーリー)
③営業部門
☒お客様のニーズを的確に把握し、その情報を工場部門に適時的確に伝達し、お客様に満足
していただける製品の製造を工場に指示
☒クレーム対応やアフターサービス等でお客様に満足していただけるサービスの品質を維持
向上
④購買部門
☒供給先(仕入先)から品質が保証されたものを、決められた納期どおりに、適正な価格で
購入
・納期が守れない供給先は品質保証に欠陥がある場合が多いので要注意。
納期遅延の原因を把握して改善を促す
・無理な低価格の押しつけは利益獲得のための手抜きをもたらし、品質上の問題を
引き起こす。適正価格で購入することは品質面からも重要
☒受入検査や社内の製造工程等で不具合が発見された場合、品質管理部門の指示のもと、
供給先に現品処置や再発防止を勧告し、実施状況をフォローアップ
⑤倉庫・出荷部門
☒倉庫保管時の品質管理
・入庫した素材や完成した製品を倉庫に保管する際の異品混入、損傷等の品質劣化が
発生しないように品質の維持管理を実施
☒出荷時の品質管理
・異品混入を防ぐために納品書等と現品の照合を確実に実施して記録を保管
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