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 2018年2月1日

社員のエンゲージメント(仕事への熱意)を高める施策について~ACS便りNo.24

 

   〈三渓園〉

 

いつも大変お世話になっております。
株式会社ACSの淡路です。

『ACS便りNo.24(2018/2/1)』を送付します。

今回のテーマは「社員のエンゲージメント(仕事への熱意)を高める施策について」です。
「日本人は仕事熱心」というのはかつての常識でしたが、昨今の各種意識調査では、日本人の『仕事へ
の熱意』は、世界各国の中で再下位クラスにとどまるほど低いことが判明しました。
それが、日本企業の収益力や労働生産性が低い一因であり、このような状況から目の覚めるようなイノ
ベーションが生まれるはずがないと指摘されています。
なぜそうなってしまったのか、そして『仕事への熱意(以下エンゲージメント)』を再び高めるには
どうすればいいのかーを私の経験を踏まえ、考えてみたいと思います。

□ □ □ □


1.エンゲージメントに関する各種意識調査の結果

 
1)米IBM傘下のケネクサの国際調査(2012年)
  ・働く人のエンゲージメントはインドが77%で首位、米国59%、ドイツ47%、フランス45%、韓国

   40%、日本は31%で28ヵ国中最下位


 2)米調査会社ギャラップの国際比較調査(2017年)
  ①日本で「仕事に熱意を持って積極的に取り組んでいる」従業員の比率は僅か6%で139ヵ国中132位
  ②日本の調査結果でさらに驚くのは、企業内にさまざまな問題を生む「周囲に不満を撒き散らして

   いる無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」の割合は実に70%


 3)近畿大学の松山一紀教授の最近の終身雇用に関する意識調査
  ・会社員1千人のうち「この会社でずっと働き続けたい」という積極的終身雇用派が25%だったのに

   対し、「変わりたいと思うことはあるが、このまま続けることになるだろう」という消極派(イヤ

   イヤ派)が40%でそれを上回った。(高度成長期にもイヤイヤ派は2割超いたが)

 
 4)調査結果からわかること
  ①日本人は、与えられた仕事を指示通りにこなす受け身のまじめさはあっても、自ら主体的・積極的

   に仕事に取り組む姿勢に欠ける
  ②会社に不満はあっても転職するまでの踏ん切りはつかず、そこに滞留する、低エンゲージメント・

   ワーカーの典型が会社の一大勢力になるまで増加
  ③このような状況では、企業の収益力強化や労働生産性向上の実現がむずかしいだけではなく、米国
   の大手IT企業のようなイノベーションを生み出すことは望むべくもない
  ④第4次産業革命が進むと、仕事の役割分担は以下のように変わると言われている。
   単純作業はRPA、ビッグデータ分析はAI、商品企画や営業といった感性、直観、創造力、
経験

   等が活かされるものは人間が担当することになるが、この人間の能力は、本人の自発的なモチベー

   ションで発揮されるものであり、「受け身のまじめさ」では十分に発揮されない 


2.エンゲージメントが低下した主な理由
 
1)日本の経営者は社員のエンゲージメント意識に対して感度が鈍い。
   多くの職場で中間管理職等中堅層として働く「就職氷河期世代」の社員(40代前半の大卒・院卒)

   やその下のミレニアル世代(2000年代に成人あるいは社会人になる、つまり1980年代~2000年代

   に生まれた世代で一番上が38歳)の社員と、経営者自らのエンゲージメントやモチベーションに対

   する意識のギャップに気づいていないため、人事政策が的外れなものになっている

    ※私の経験では、経営者の意識で多いのは次のとおり
     ・単なる世代の違いとして上記の意識の違いを軽く見る(自分達も上の世代から同じことを

      言われた)
     ・社員には金銭的なインセンティブさえ与えておけば大丈夫(社員は報酬だけでは動かない)
     ・寡黙な社員より厳しい意見を言う株主を意識せざるをえない(利益還元で株主偏重)

     ・仕事ができる上司や先輩のようになりたい(身近に「ロールモデル」がいた)

     ・仕事で上司に怒られると闘争心が強くなり、次からは文句を言わせないように頑張る

     ・与えられた仕事をするのは大嫌い。自分で課題を見つけて達成するのが仕事
  ①日本の経営者は従業員の意識に対して感度が鈍い理由 
   ◎日本の労働市場は流動性が低く、社員の離職率が高くないため、優秀な従業員の退職リスクを経営者が

    重視しない
   ◎コーポレートカバナンスの観点から、ステークホルダーの中で株主・投資家を偏重し、従業員の位置づ

    けは高くない(だから労働分配率が低下) 

  ②「就職氷河期世代」(日本固有の世代)の社員の特徴と意識

   ◎大卒として正規社員の職を求めたが、非正規社員の職に就かざるを得なかった世代なので、社員の

    地位を失いたくないという思いから終身雇用派が多い
   ◎40代前半の平均月収は、バブル入社世代を含む2000年代半ばまでは50万円を上回っていたが、

    「就職氷河期世代」が大部分の2016年には、その額は44万円台まで落ち込んでいる。(厚生労働書

    「賃金構造基本統計調査」)
    つまり、この世代は賃金の面で上の世代より不利な扱いを受けている。
    さらに、上の世代であるバブル世代の大量入社の影響で上のポストがなかなか空かないという問題

    抱えている
   ◎この世代は、若い頃にサービス残業を強いられる一方、職場で能力開発の機会を十分に与えられなか

    ったとの思いも強い
   ◎以上まとめると、彼らは大学卒業時の困難を20年経っても未だに引きずっている
  ③ミレニアル世代(先進国共通の世代)の社員の特徴と意識
   ◎インターネットが普及した環境で育った最初の世代で情報リテラシーに優れデジタルネイティ
   ◎自己中心的であるが、他者の多様な価値観を受け入れ、仲間とのつながりを大切にする傾向がある
   ◎「働き方改革」で言われる、柔軟な働き方に価値を置き、それが実現すれば「生産性」「モチベー

    ション」「健全な生活、健康、幸福度」に良い影響ありと捉えている
   ◎物事の進め方に意見を出したがり、上司は自分達(ミレニアル世代)からも学べると考え、彼らが

    求めるリーダー像は、オープンで明瞭、正直でコミュニケーション力があり、誠実さと透明性を

    持って協力する人(縦社会ではなく、フラットに近い関係)


 2)日本の会社の従業員の年齢構成の歪み
  ・若手が新しい提案をしても、職場の多数派の中高年層が反対して実現しないことが繰り返され、若
手が

   あきらめる
 
3.エンゲージメントを高める施策

 
1)社員のエンゲージメント・モチベーションに関する、正確な意識調査の実施。
   独立して調査するより、働き方改革や生産性向上活動との関係で調査する方が社員は受け入れやす
  ①エンゲージメントに関する社員の生の声を拾い出す意識調査
   ・社員は自分のエンゲージメントを高めるために会社に何を求めるのか、自分は何をすべきなのかを

    調査
     ※社員を会社の意向に誘導するような意識調査は不可 
  ②社員のエンゲージメントに関する経営者、経営幹部、人事部門の意識調査
   ・それぞれの立場で、社員のエンゲージメントを高めるために会社は何をすべきと考えているのか調査  
  ③両者のギャップを把握し、その発生原因を掘り下げる


 2)この調査結果をもとに、社員のエンゲージメントを高めるために会社は何をすべきかを、

   以下のエンゲージメントドライバー(エンゲージメント向上に影響を与える要因)を基準

   にして検討し明確化
 
   ◇米国の人材・組織コンサルティング会社、Human Resources Solutionが提唱する
    10個のエンゲージメントドライバー(エンゲージメント向上に影響を与える要因) 
    (1)認知
     承認欲求(自分の存在を認めているか、自分の業績をしっかり評価しているか)が
     どの程度満たされているか?
    (2)キャリア開発
     成長欲求(仕事を通じて自分の能力が高まる)がどの程度みたされているか?
    (3)直属の上司のリーダーシップ
     認知やキャリア開発の一番の責任者は直属の上司。上司から認められているか?
     成長の機会を与えられているか?
    (4)戦略と使命
     企業全体としてどのような戦略を持ち、どんな使命を果たそうとしているのか?
     企業全体の戦略、使命に対して個々の従業員はどんな役割、貢献ができるかを理解しているか? 
    (5)職務内容
     職務内容が自分の興味の持てるものか?
    (6)上級マネジメント層と従業員の関係
     直属の上司だけではなく、社長や役員が何を考えているかを知ることができるか?
    (7)オープンで効果的なコミュニケーション
     言いたいことが言い合える職場か?
     情報が共有されていて業務が円滑に進められるか?
    (8)同僚についての満足や協調
     働く仲間をお互いに良く知り、協調して働ける職場か?
    (9)仕事を効果的に遂行するために必要な資源入手の容易性
     仕事をきちんとするために必要な道具や情報がすぐ手に入るか?
    (10)組織文化
     優れた組織文化(セクハラやパワハラのない組織、社会的責任をきちんと認識し、非倫理的な行為を
     行わない組織、プライベートな時間も相応に取れるような労働条件)なのか?


 3)
検討結果を人事戦略や人事政策(人事評価制度、給与制度、キャリアパス、能力開発プログラム等)に

   反映。日本の会社の喫緊の課題である「働き方改革」や「生産性の向上」は、社員の高いエンゲージメン

   トなしには実現できないため、スピードを重視して実行。
   併せて以下の対策は速やかに実施 
    ◎職場を活気づかせる上司の選抜と配置
     (要件)
      ・部下と多くのコミニュケーションがとれる、部下からの相談に気軽に応じることができる
      ・部下の「弱み」ではなく、「強み」に着目したマネジメントができる

       (社員の「強み」を生かせる仕事に変える、職場に変える)
      ・若手の発意やアイデアを生かす工夫ができる
    ◎若手の抜擢人事
    ◎外部人材の導入による職場の活性化

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