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 2018年1月1日

製造業の昨年の振り返りと今年の課題について~ACS便りNo.23

 

   〈マリンタワーから見た横浜港の夜景〉

 

株式会社ACSの、戌年生まれで今年が年男の淡路です。
新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

『ACS便りNo.23(2018/1/1)』を送付します。

 

時節柄、自社や自分の業務について、昨年の総括と今年の課題を考えておられることと思います。
私も、弊社のコンサルティングの対象業種である製造業について、2017年を振り返り、2018年の課題は何かを
考えてみましたので以下に記します。

□ □ □ □

1.製造業の昨年の振り返り
 1)生産性の低下による優位性の喪失(日経新聞2017年12/27)
   ①日本の製造業の生産性(付加価値額を労働者数で割ったもの)は、OECD主要29か国中2000年まで第1位

    だったが、2005年に7位、2010年には10位と大きく後退。2015年には14位に低下(過去最低だった2008

    年、2014年と並んだ)
   ②日本が生産性で競争力をなくした原因
    人件費が安い新興国が製造現場として台頭し、ものづくりの在り方を大きく変えるデジタル化が進む等

    競争の前提条件が大きく変わったにも関わらず、発想の転換ができず、欧米に比べて工場のIT化の取り

    組みが大きく遅れた(ドイツではインダストリー4.0の取り組みが進む)
  
 2)品質管理の長年の不正発覚
   ①自動車完成車メーカー(日産自動車・SUBARU)の無資格検査と素材メーカー(神戸製鋼所・三菱

    マテリアル・東レ)おける品質データ改ざんで日本のものづくりの信頼が失墜
   ②企業は、顧客の満足度を高めるために、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)の三つの要素全てに

    ついて、顧客の要求を適切に満たさなければならない。
    日本の製造業は2000年以降、業績回復や事業拡大に注力してCとDを優先し、Qを軽視してしまった

    ことがその原因と考えられる
   ③品質管理に対するトップの意識の低下
    (日経新聞2017年11/29 経済教室、2017年12/14中外時評)
    ・日本企業の品質改善を支えるQCサークルの数が2000年以降大幅に減少
    ・技術者やスタッフ、マネージャーが行う高度な改善活動に必要な専門教育(日科技連等が実施)の

     受講者が大幅に減少 
    ・品質管理教育への投資の減退
     品質管理教育投資の売上高に占める割合はほぼ0.1%で推移。さらに2016年は0.01%未満の企業が

     37%に増加
    ・中国等の海外製品の品質向上により、品質の良さが他社との違いを打ち出す武器になりにくくなった

     ため、品質管理に関する経営者の熱意や関心が以前より薄れている

 

  3)自動車産業の100年に1度の変革(日経新聞2017年12/19)
   ①CASE(自動車産業の変革を象徴するキーワード)と言われる変革に完成車メーカーが急ピッチで
    取り組んだ
     C=Connected(コネクテッド):つながる
     A=Autonomous(オートノマス):自動運転
     S=Sharing(シェアリング):共同所有
     E=Electricity(エレクトリシティー):電動化
    
    〈トヨタ自動車の自動車産業変革への取り組み〉
     C:米マイクロソフトとビッグデータの解析で提携。KDDI、NTTと通信技術で連携
     A:2020年代前半に一般道での自動運転が可能な車両を商品化。AI人材をスカウトし、
       ベンチャーに出資 
      ※仏ルノー・日産自動車連合は2022年に完全自動運転車を開発
     S:ライドシェア(相乗り)の米ウーバーテクノロジーズやシンガポールのグラブと協業
     E:2020年代前半までに10車種以上市場に投入し、2030年に世界の販売台数の半数に当たる550万台

       以上の電動車を販売。 2030年までに車載用電池に1.5兆円を投資。電池事業でパナソニックと

       協業。マツダ・デンソーとEV連合
   ②CASEで従来の取引の減少が見込まれる素材メーカーや部品メーカーが対応に着手
   
2.製造業の今年の課題
  1)生産性の向上
   ①日本政府は生産性向上の巻き返しをめざし、2018年度から革新的な技術に投資した企業に対して、    
    減税の優遇策を実施するのでこれを積極的に活用
   ②工場のIT化の強力な推進
    ・先ずはITで「工場の生産管理・生産工程の可視化」を実現
    ・最終的には、多品種少量・変種変量生産をIoT、ビッグデータ、AI、ロボティクス等の最新の

      テクノロジーで完全自動化し、生産性を飛躍的に向上
   ③生産性向上の成果を早期に出して、残業時間削減等の「働き方改革」の課題を実現

 

  2)品質管理の信頼回復
   ①品質不正で問題を起こした企業だけでなく、全ての製造業で自社の品質管理の水準や体制をチェッ

    し、以下の課題に取り組むべき
    ・経営トップの品質管理意識の高揚
    ・経営陣・幹部と現場が一体となり、問題が改善点があれば迅速に対応する横断的組織に変革。
    ・CQO(最高品質責任者)を任命し、その下で品質管理のガバナンスを強化し、品質管理専門家育成に

     必要な教育投資を実施 
   ②検査工程における品質の測定やデータ収集等のオペレーションの自動化と検査業務の付加価値向上
   ③完成車検査や製品データのあり方を実態に合わせ見直す

 

  3)自動車産業の変革
   ①CASEにおける、自前主義からの脱却と異業種とのさらなる提携(オープンイノベーション)   
   ②CASEで事業環境が激変する素材メーカーや部品メーカーの生き残り策の推進
   ③生産性の高い自動車業界が工場のIT化を早期に実現してさらに生産性を高め、製造業全体の生産

     性向上の動きを牽引

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