2017年11月1日
『働き方改革』を実現する生産性の向上について~ACS便りNo.21
いつも大変お世話になっております。株式会社ACSの淡路です。
『ACS便りNo.21(2017/11/1)』を送付します。
今回のテーマは、「『働き方改革』を実現する生産性の向上について」です。
今年の1/15と2/1に同じような趣旨のテーマでメルマガを配信しましたが、その後9か月が経過し、業績好調
であるが故の多忙さから、企業の『働き方改革に関わる生産性向上』の進捗は概して良くないと思われます。
そこで、その進捗状況の問題点を明らかにし、今後の進め方について所感を記します。
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1.「働き方改革」と「生産性向上」の関係と「生産性向上」の取り組み方
過去にメルマガで記したように、「働き方改革」と「生産性向上」の関係と「生産性向上」の取り組み方は
以下のとおり理解しています。
1)「働き方改革」と「生産性向上」の関係
①少子高齢化の影響で人手不足が中長期的に避けられない企業環境のもと、「企業が収益力を向上し、持続
的な成長を実現する」ためには、「優秀な人材を確保し、社員の能力を十分に発揮する」ことが不可欠。
それを可能にするのが「働き方改革」であり、さらにそれを実現する手段が「生産性の向上」
※「働き方改革」の中には、「テレワーク」のような生産性向上策も含まれているが、これは、「働き方改革」と「生産性
向上」の関係が上記と逆になっているため、「働き方改革」の目的の理解が混乱する原因になっている
②「働き方改革」における「長時間労働の是正」や「同一労働同一賃金」等の処遇改善はそれ自体がコスト
アップ要因なので、生産性を上げない限り実現できない。つまり「生産性の向上」が先にありきなのである
2)「生産性向上策」の取り組み方
「働き方改革」に関わる改正労働関連法の施行前に、「生産性向上」の成果を上げ、「働き方改革」の処遇
改善ができる状態にしておくことが肝要。そしてそれを実現する推進日程を作って取り組むべき
2.「生産性向上」の目標と施策
これも以前のメールに書いたように、生産性向上の目標は、改善レベルのもの(年間3%程度のアップ)と
改革レベルのもの(中期的に30%程度のアップ)をふたとおり設定し、目標に応じた施策を推進すべきと
考えています。
1)改善レベルの目標を達成する施策
①職場慣行の是正
■部門長には意識を変えて以下のように自部門の業務と職場風土を見直すことが求められる
・上司が会社にいる間は部下も帰れないという悪い習慣をなくす
・時間管理を厳しく行う
・業務を標準化し、属人的な業務をなくす
・仕事の配分を特定の優秀な部下に偏らせない
・自分主催の会議の必要性と所要時間を見直す
・人事評価は仕事の成果で行い、労働時間が長いことでは評価しない
・残業がつかない管理職の労働時間は長くて構わないという意識をなくす
・「改善レベルの生産性向上策」は会社が与えるものではなく、社員自らが考えるものという意識を部下
に植えつける
②経営層(経営トップと役員)の意識改革
■経営層も当然「働き方改革」の当事者であり、改革の旗振り役だけではなく、自らの業務に関して次の
ような意識改革が求められ、実行すれば即効性がある
・優秀な部下に対する業務指示の過度な集中をやめる
・思いついた検討課題を何でも部下に振ることはやめる
・裏づけのデータ取りやシュミレーションを必要以上に指示しない
・会議資料への細かい注文をやめる(既にある資料での代用を認める)
2)改革レベルの目標を達成する施策
①実態把握
■業務時間分析
・個人別に業務毎(単純作業、課題検討、資料作成、会議出席、出張、関連部署との調整〔根回し〕、
上司へのプレゼン等の区分)の所要時間を把握
・業務をコア・ノンコア業務や定型・非定型業務に分類して分析
■業務プロセス分析
・主要業務のプロセスを把握し、手間をかけないプロセスに変更できないか、他の業務のプロセスと重複
がないか、テレワークでできないか等を分析
②対策
■上記の実態把握により業務量を削減
■削減して残った業務について、全社的にIT化(※RPA、AI、クラウドソーシング、IoT、
Web会議システム等)、アウトソーシング化、配員の見直し等を検討
※RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)
パソコンの定型作業を自動化するソフト。利用企業の97%で業務の処理時間が半分以下になった
(日本RPA協会)。金融機関をはじめとして幅広い業種で採用
■「働き方改革」で言われている「テレワーク」の実施
・テレワークを進めるには、書類による情報共有や印鑑による決済など従来の仕事のやり方を見直して
IT化を加速することが重要。併せて、「報連相」の低下を招かない仕組み作りも必要
■社員のモチベーションを維持・向上する仕組み作り
・人事評価基準を時間から仕事の質に転換 (人事評価基準に「生産性向上」の項目と指標を設定)
・生産性を上げて残業手当が減った分は、賞与や手当を増額して年収が減らないように給与・賞与制度
を変更
3.「働き方改革を実現する生産性向上策」の進捗状況の問題点
1)「2017年労働時間等実態調査集計結果(2017年7月18日 日本経団連)」
①(設問)長時間労働につながりやすい職場慣行
(回答)・業務の属人化:27.3%
・時間管理意識の低さ:21.7%
・業務効率の悪さ:18.5%
・業務の標準化不足:13.7%
・残業が当たり前、美徳とする雰囲気:12.9%
・過剰な品質追求:11.2%
・資料作成:11.2%
・会議の多さ・長さ:9.2%
・帰りにくい雰囲気:7.6%
・人員不足:4.8%
②(設問)長時間労働の是正に向けた施策等(数値目標達成施策以外)
(回答) ・ノー残業デー・定時退社:23.3%
・計画年休取得:15.7%
・在宅勤務:13.3%
・フレックス導入:12.4%
・ITCツール導入:10.8%
・業務改善活動:8.8%
・夏季・飛び石連休時の休暇取得奨励:5.6%
・労使で働き方を検討:4.4%
・36協定特別条項の変更:3.6%
2)「働き方改革の実態調査2017 ~Future of Workを見据えて
(2017年9月5日 デロイトトーマツコンサルティング)」
①(設問)「働き方改革」の効果
(回答)・効果を実感している企業:49%
・従業員の満足を得られている企業:28%
②(設問)「働き方改革」の進め方
(回答)・KPIを設定して改革のPDCAを回している会社:22%
③(設問)「働き方改革」による組織風土の変化
(回答)・ある程度の長時間労働は仕方ないという企業:59%
・長時間働いている人が頑張っている人だとポジティブに評価される企業:45%
・時間当たりの生産性はあまり評価されない企業:53%
3)実態調査から読み取れる進捗状況の問題点
①「働き方改革を実現する生産性向上策」の取り組みは、ライン長が意識を変えて自部門の業務見直しや
職場風土の変革を行うという、「改善レベルの生産性向上策」が主流。全社的には「ノー残業デー等」の
人事施策(残業削減策)を実施している段階
②「働き方改革」の実現に大きく貢献する「改革レベルの生産性向上策」は現在検討中か未検討と推測
※メガバンクが先日発表した業務3.2万人分削減は正に「改革レベルの生産性向上策」
③「働き方改革」を実施して成果を上げている企業は半数あるが、それによって従業員が満足を得ている
企業は3割弱しかない。経営層と従業員のコミュニケーション不足で、従業員が「働き方改革を実現
する生産性向上策」を単なる利益確保と受け止めており、従業員に価値あるもの(心身の健康の向上、
従業員満足度向上)という共感を得られていない
④一般的な全社活動と同様、KPIを設定し、定期的にモニタリングを実施してPDCAを回している企業
が効果を上げているが、そのような企業はまだ少数
⑤長時間労働を是とする組織風土(ある程度の長時間労働は仕方ない、長時間働いている人が評価される、
時間当たりの生産性はあまり評価されない)は依然として解消されていない
4. 今後の進め方
追い風が吹き、事業が好調で多忙なため、「働き方改革を実現する生産性向上策」に取り組めない会社が多い
ことは承知しています。
しかし、宅配便業界の昨今の動向でもわかるように、ヒトというリソースが確保できない企業は淘汰される時代
に入っています。今、ここで生産性向上に着手して働き方改革を実現しないと生き残っていくことは困難です。
そこで、以下に今後の進め方を示しますので、早期に行動することを切に望みます。
1)「働き方改革」の目的は何か、「働き方改革」と「生産性の向上」の関係はどうなっているか、
生産性向上策とは具体的に何か、長時間労働を是とする組織風土をなぜ変革しなければいけないのか等
をわかりやすく整理し、社長は本気度が伝わるメッセージを従業員に発信。
従業員には、生産性を向上すれば、「働き方改革」の処遇改善が実現でき、従業員の満足度が向上する
ことをよく理解してもらう
2)「改善レベルの生産性向上策」は全部門ができることからすぐに実施して効果を出す
3)「改革レベルの生産性向上策」は全社的な施策になるため、委員会やプロジェクトを組成し、
2018年度上期検討終了、2019年度下期実施、2020年度完全実施というレベルのスケジュール感で
取り組む
4)生産性向上の成果を見ながら、「働き方改革」の処遇改善を実施
5)以上の活動を定期的にモニタリングしてPDCAを回す体制を構築し、推進状況を確実にフォローアップ
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