2017年6月15日
2017年6月株主総会の運営(3)~ACS便りNo.14
〈瀬谷市民の森〉
大変お世話になっております。
株式会社ACSの淡路です。
『ACS便りNo.14(2017/6/15)』を送付します。
□ □ □ □
今回のテーマの『2017年6月株主総会の運営(3)』は、総会直前対策編として今年の総会で特に留意すべき点を中心に記載します。
1.今年の株主総会の位置づけと特徴
①位置づけ
☒スチュワードシップ・コード改訂の影響
■スチュワードシップ・コードとは?
・スチュワードシップ・コードとは年金基金や信託銀行等の機関投資家に求められる行動原則に関する指針で2014年2月に金融庁が公表。
国内外で200超の機関投資家がこの受け入れを表明
・コードでは、「企業との対話に向けた行動指針の作成と公表」や「対話の効果を高められる人材の 育成や体制整備等」を機関投資家の
責務とした
・2017年5月に改訂版が公表され、株主総会における議決権行使の透明性向上を重視し、機関投資家に議案の賛否の個別開示を求めている
※議案の賛否の個別開示は義務でなく、非開示の場合は理由の説明が求められる。
ただ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等の資金の出し手が個別開示を要請しているため、機関投資家である運用会社
※議案の賛否の個別開示は義務でなく、非開示の場合は理由の説明が求められる。
ただ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等の資金の出し手が個別開示を要請しているため、機関投資家である運用会社
の多くが投資先企業別の議案ご との開示を実施
■スチュワードシップ・コード改訂の影響は?
・機関投資家は、議案賛否の個別開示が求められるようになったので、議決権行使基準を厳格な方向に変更し、議案をこれまで以上に
・機関投資家は、議案賛否の個別開示が求められるようになったので、議決権行使基準を厳格な方向に変更し、議案をこれまで以上に
厳密に精査するようになった。
その結果、6月総会では議案への反対比率が高まりそうである
その結果、6月総会では議案への反対比率が高まりそうである
【議決権行使基準の変更例】
(1)社外取締役選任
・2人以上必要(野村アセットマネジメント)
・取締役総数の1/3以上いなければ買収 防衛策に反対(アセットマネジメントOne)
(1)社外取締役選任
・2人以上必要(野村アセットマネジメント)
・取締役総数の1/3以上いなければ買収 防衛策に反対(アセットマネジメントOne)
・取締役会出席率は3/4以上必要(三菱UFJ信託銀行)
(2)財団への株式割り当て
・5%以上希薄化する場合は反対(三井住友信託銀行)
・市場価 格より1割超安い価格の場合は 反対(ニッセイアセットマネジメント)
【機関投資家が議決権行使を厳格 に行った例】
(1)野村アセットマネジメント
野村証券が主幹事の企業の取締役・監 査役選任議案や野村證券がアドバイザーになったM&A議案に反対票を投じた
(2)三菱UFJ信託銀行
三菱グループ企業(三菱自動車)の 取締役選任議案(三菱グループの御三家の首脳を起用する人事案) にも一部反対し、
(2)財団への株式割り当て
・5%以上希薄化する場合は反対(三井住友信託銀行)
・市場価
【機関投資家が議決権行使を厳格
(1)野村アセットマネジメント
(2)三菱UFJ信託銀行
グループ企業間の関係よりも、お金の出し手の利益を追求する「投資の論理」を重視する姿勢を明確にした
☒株主総会の位置づけの変更
■スチュワードシップ・コード改訂の影響を受け、今年から株主総会の位置づけは、企業統治の質向上について株主と会社が真剣に
☒株主総会の位置づけの変更
■スチュワードシップ・コード改訂の影響を受け、今年から株主総会の位置づけは、企業統治の質向上について株主と会社が真剣に
対峙する場に変わる
②特徴
☒株主提案数が過去最高となり、議決権行使助言会社(ISS、グラスルイス)は株主提案に賛否を推奨
■6月総会の株主提案(株主が提案する議案。総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6か月以上前から保有する株主に
②特徴
☒株主提案数が過去最高となり、議決権行使助言会社(ISS、グラスルイス)は株主提案に賛否を推奨
■6月総会の株主提案(株主が提案する議案。総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6か月以上前から保有する株主に
行使が認められている。提案数や提案内容に制限はない)の数が過去最高(6/9現在209件で前年より25%増加)
■議決権行使助言会社が賛否を推奨した株主提案
■議決権行使助言会社が賛否を推奨した株主提案
(いずれも会社側は反対を表明)
・武田薬品工業の「相談役・顧問を設置する場合、総会付議を必要とする定款変更」という株主提案に賛成を推奨
・みずほFGの「配当を取締役会だけでなく、株主総会でも決議できるように定款を変更」と「役員報酬の個別開示」という株主提案に
賛成を推奨
・蝶理の「政策保有株の売却や増配」という株主提案に賛成を推奨
・フェイスの「日本コロンビアの完全子会社化に向けた株式交換」という株主提案には反対を推奨
2.今年の総会の留意点
①決議事項(議案)
☒多くの機関投資家や議決権行使助言会社の反対が予想される議案
■取締役選任議案
【反対理由】
・2人以上の社外取締役を選任しない
・社外取締役が取締役全体の1/3未満
⇒米国最大の公的年金(カルパース)と英国運用会社3社が日本企業の統治改革への働きかけで初めて連携をとり、社外取締役数を全体の
1/3以上にすることを共同で要請し、 応じない企業には今年の総会の取締役選任議案で原則反対票を投じる
・取締役会の出席率が3/4未満の取締役の再任
・直近かつ5年平均のROEが5%を下回る取締役(特に経営トップ)の再任
⇒ISSの取締役選任・監査役選任議案の反対推奨に対して新日鉄住金が反論を公表
・社外取締役候補者の独立性に問題あり
⇒ISSの社外取締役選任議案の反対推奨に対して野村HDが反論を公表
・社外取締役が6社以上を兼務する場合、掛け持ちが多いと十分なチェックができないため反対推奨
・買収防衛策を導入している企業の取締役選任議案に反対
■剰余金の処分議案
【反対理由】
・潤沢なキャッシュを成長投資に使わず、配当も増配しない
■買収防衛策の継続議案
【反対理由】
・買収防衛策が経営陣の保身に使われる恐れあり
■監査役や社外取締役への新株予約権割り当て議案
【反対理由】
・監査役、社外取締役に求められるチェック機能が弱まる懸念あり
■財団に自社株を実質的に譲渡する議案
【反対理由】
・安定株主作りの懸念あり
・5%以上の希薄化、市場より1割超安い価格
■相談役・顧問制度を新規導入する定款変更議案
【反対理由】
・過去に相談役が意思決定した案件を社長が覆すのは難しく、不採算事業からの撤退遅れ等が生じる
・取締役会の出席率が3/4未満の取締役の再任
・直近かつ5年平均のROEが5%を下回る取締役(特に経営トップ)の再任
⇒ISSの取締役選任・監査役選任議案の反対推奨に対して新日鉄住金が反論を公表
・社外取締役候補者の独立性に問題あり
⇒ISSの社外取締役選任議案の反対推奨に対して野村HDが反論を公表
・社外取締役が6社以上を兼務する場合、掛け持ちが多いと十分なチェックができないため反対推奨
・買収防衛策を導入している企業の取締役選任議案に反対
■剰余金の処分議案
【反対理由】
・潤沢なキャッシュを成長投資に使わず、配当も増配しない
■買収防衛策の継続議案
【反対理由】
・買収防衛策が経営陣の保身に使われる恐れあり
■監査役や社外取締役への新株予約権割り当て議案
【反対理由】
・監査役、社外取締役に求められるチェック機能が弱まる懸念あり
■財団に自社株を実質的に譲渡する議案
【反対理由】
・安定株主作りの懸念あり
・5%以上の希薄化、市場より1割超安い価格
■相談役・顧問制度を新規導入する定款変更議案
【反対理由】
・過去に相談役が意思決定した案件を社長が覆すのは難しく、不採算事業からの撤退遅れ等が生じる
・相談役・顧問の人事や報酬を株主が決められない
☒ 機関投資家等が反対する議案への対応
■機関投資家の最新の議決権行使基準をチェックし、反対している機関投資家とは対話して会社提案の内容をよく説明し、理解を求める
■議決権行使助言会社の反対推奨に対しては、機関投資家が同調した投 票行動をとらないように反論をきちんと公表する
②報告事項
☒ 今年の想定問答集の新規質問は以下のとおり
■地政学リスクも含めた、国際情勢への対応
・トランプ政権の通商政策(保護主義)や ドル安円高誘導、イギリスのEU離脱、シリア・北朝鮮の 地政学リスク、中国・ロシアの外交政策
☒ 機関投資家等が反対する議案への対応
■機関投資家の最新の議決権行使基準をチェックし、反対している機関投資家とは対話して会社提案の内容をよく説明し、理解を求める
■議決権行使助言会社の反対推奨に対しては、機関投資家が同調した投
②報告事項
☒ 今年の想定問答集の新規質問は以下のとおり
■地政学リスクも含めた、国際情勢への対応
・トランプ政権の通商政策(保護主義)や
(膨張主義)、韓国の新政権発足等から受けるビジネスの影響と対応策
■技術革新への対応
・第4次産業革命、IoT、ビッグデータ、AI、フィンテック、ロボット、自動運転 等の技術革新にビジネスチャンスとして、またはビジネス
■技術革新への対応
・第4次産業革命、IoT、ビッグデータ、AI、フィンテック、ロボット、自動運転
リスクとしてどう対応するか
■人口減への対応
・ダイバーシティ(女性、シニア、外国人等)の取り組み状況
■「働き方改革」への対応
・「働き方改革」の社内の取り組み(当面の施策、生産性向上策とその効果としての処遇改善)
・「働き方改革」をビジネスチャンスとしてどう生かすか
■企業統治改革の進捗状況
・カバナンスにおける社外取締役の実効性
■事業投資(M&A)の減損リスク
・事業投資のマネジメントシステムの概要、事業投資の全体像と個々の投資案件の回収可能性
■人口減への対応
・ダイバーシティ(女性、シニア、外国人等)の取り組み状況
■「働き方改革」への対応
・「働き方改革」の社内の取り組み(当面の施策、生産性向上策とその効果としての処遇改善)
・「働き方改革」をビジネスチャンスとしてどう生かすか
■企業統治改革の進捗状況
・カバナンスにおける社外取締役の実効性
■事業投資(M&A)の減損リスク
・事業投資のマネジメントシステムの概要、事業投資の全体像と個々の投資案件の回収可能性
・東芝、日本郵政の問題との関連で、過去の 事業 投資の「のれん」の金額、償却状況と減損の可能性
■不適切会計の防止等を目的とした海外グループ会社の管理体制
■ビジネスパートナー(下請け)の取引条件改善に関する取組み状況
■ビジネスパートナー(下請け)の取引条件改善に関する取組み状況
■役員報酬に占める株式報酬の導入状況
■顧問や相談役の設置を認める定款を変更して新任を認めないことにしないのはなぜか
■業績不振、不祥事の原因と今後の対応策
・海外子会社の会計不備、まとめサイト事業での著作権侵害、従業員の長時間労働問題等
■創業家との関係
■顧問や相談役の設置を認める定款を変更して新任を認めないことにしないのはなぜか
■業績不振、不祥事の原因と今後の対応策
・海外子会社の会計不備、まとめサイト事業での著作権侵害、従業員の長時間労働問題等
■創業家との関係
3.株主総会の今後の検討課題
☒ 株主総会を6月下旬ではなく7月に開催?
■「企業が株主との対話を通じて企業価値を高める機会を増やす」という流れをさらに加速するため、定款を変更し、総会の議決権発生の基準日
を配当の基準日と切り離して現在の3月31日よりも後に設定すれば7月開催は可能。(法人税の申告期限は従来の6月から伸ばしてある)
政府が旗を振っているが、株主の配当金受け取りや取締役の就任時期の遅れ等のデメリットを理由に今のところ会社が出ていない。
これは今後の検討課題
株主総会本番まで残すところあと僅かとなり、総会担当者の皆様は最後の準備で大忙しだと思いますが、皆様のご活躍と御社の株主総会のご成功を祈念いたします。
【ビジネス豆知識】 今回はお休みします。
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