2017年5月15日
2017年6月株主総会の運営(1)~ACS便りNo.12
〈日光 江戸村〉
大変お世話になっております。
株式会社ACSの淡路です。
『ACS便りNo.12(2017/5/15)』を送付します。
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先週は3月決算会社(上場企業)の決算発表のピークでした。決算発表の当日には、決算取締役会で前年度決算の承認の他、6月に開催される定時株主総会の招集と付議事項が決定され、その後総会の準備が本格化します。今年の株主総会の集中日は東京証券取引所の発表によると6月29日(金)だそうです。
前回のACS便りでお知らせしたとおり、今回から3回にわたって株主総会の運営をテーマにします。
今回は、『2017年6月株主総会の運営(1)』として、総会の概要と運営の留意点(前半)をお届けします。
筆者はふたつの上場会社に所属し、通算20回以上事務局として株主総会に出席しました。特に前職では、300名を超える株主が出席する総会の実務責任者として、議長のすぐ後の事務局席で顧問弁護士と連係して議長の議事運営を補佐しました。その経験とノウハウをもとに、総会運営について法律的な説明は極力避け、わかりやすくポイントを記載したいと思います。なお、以下の記述は筆者がこれまでに実施してきた内容でありますが、違った実務上の取り扱いも当然ありえますので、株主総会の全体像を理解するという意味合いでご一読願います。
1.株主総会の概要
①株主総会は会社の最高の意思決定機関であり、取締役・ 監査役等の役員体制、定款の変更、グループ組織再編、 M&A等会社と
して極めて重要なテーマを決定する会議体である
☒ 会社の最高の意思決定機関
・会社の業務執行の意思決定はさまざまな機関(株主総会、取締役会、社長、担当取締役、本部長、部長等)で行われるが、最も
重要なテーマの意思決定は最も重要な機関である株主総会で行う。併せて、重要なテーマの報告も行う
☒ 株主総会の議題
・報告事項と決議事項に分かれるが、それぞれ
■報告事項の代表例
・第●期事業報告、連結計算書類ならびに会計監査人および監査役会の連結計算書類監査結果報告の件(連
・第●期計算書類報告の件(単体)
■決議事項の代表例
・定款一部変更の件
・取締役●名選任の件
・監査役●名選任の件
☒ 株主総会で議決権を行使できる株主
・総会に出席して議決権を行使(議題に対する会社提案等に対して賛否の意思表示を行う)できるのは、基準日(3月31日)現在
の株主名簿に記載された単元株主(通常は1単元100株)。所有株式数に応じた議決
☒ 決議事項の決議方法
・議題の重要度に応じて、定足数と可決条件が決められている
■普通決議・・・・取締役、監査役の報酬枠の設定の議案等
〔定 足 数〕なし
〔可決条件〕総会に出席した株主の議決権の過半数の賛成
■役員選任決議・・取締役・監査役・補欠監査役の選任議案等
〔定 足 数〕総株主の議決権の1/3以上を有する株主の出席
〔可決条件〕総会に出席した株主の議決権の過半数の賛成
■特別決議・・・・定款変更、
〔定 足 数〕総株主の議決権の1/3以上を有する株主の出席
〔可決条件〕総会に出席した株主の議決権の2/3以上の賛成
②株主総会は会議体の一種なので常識的な運営が法律で定められている
☒ 総会の所要時間
・株主総会も会議の一種なので、所
☒ 総会の議長
・株主総会の議長をどの役職者にするかは会社の憲法と言われる「定款」で定める
・通常は代表取締役社長が議長を行う。議長は総会の議事整理と秩序維持の権限を有する
☒ 議題等の説明
・株主に対して議題内容のわかりやすい説明を行うため、「総会のビジュアル化(スライドを映し出して説明)」が一般的
・報告事項の説明はナレーションで行うことが多い
※ナレーションのメリット:想定した時間どおりの運営、説明の負担軽減、数字の読み間違いなし
・事業報告の「対処すべき課題」は、総会で報告する唯一の将来の取り組みに関する話なので株主の関心も考えて経営トップが
口頭で説明することが多い
・決議事項の説明は、議長(社長)が議長席
・監査報告は常勤監査役が、株主数等の会議
☒ 質問・意見と回答
・通常の会議と同様、出席者は報告事項と決議事項の内容について質問や発言をすることができる。
取締役や監査役には質問に対して回答する義務があるため、懇切丁寧に回答する(木で鼻をくくったような回答はしない)
・総会の議題に関係ない等の質問に回答義務はないが、 昨今の株主との対話を重視した総会運営では先ず回答を拒否すること
はない
2.株主総会の運営の留意点(前半)
①総会の運営で最も重要なのは、会社法や定款等の法律に基づき、「報告すべきことはきちんと報告し、決議すべきことは
きちんと決議すること」である
☒ 決議取り消しの訴え
・決議に著しい不公正があった場合、「決議取り消しの訴え」が提起されて敗訴するリスクがあるため動議対応も含め上記の
基本姿勢を貫いた運営を行う
※決議取り消しの訴え
株主等が以下の事由によ
目的とする訴訟
(1)総会の招集手続、決議方法が法律・定款に違反または著しく不公正(一部の株主への招集通知漏れ、招集通知の
記載・ 添付書類の不備、招集通知期間の不足、決議が定足数を欠く、社員株主の協力を得た総会の進行等)
(2)決議の内容が定款に違反
☒ IRの要素
・総会にIRの要素を取り入れることに腐心すべきではない。IRは総会後に開催する株主懇親会等で行えばよい
☒ 質問に対する議長指示
・議長は議事整理権限と秩序指示権限を行使し、質問受付箇所は報告事項、決議事項を全て説明
質疑応答方法は一問一答方式を議場に指示する
☒ 質問状が来た場合の対応等
・質問状が来た場合は、「一括回答書」を作成して回答を読み上げる。総会当日に質問状送付株主が欠席した場合でも報告事項を
補足するという意味合いで読み上げる
・株主の多くが関心を寄せるテーマがある場合は、質問されてから答えるのではなく、予め報告事項の一部として積極的に説明する
☒ 総会の時間配分シナリオ
・総会の時間配分のシナリオを作成。そのとおりにいかなくてもリハーサル等で議長、役員が運営の流れを理解するために必要
■ナレーションを含む会社側説明 40分
■株主との質疑応答(10名) 60分 ※60分=(質問2分+回答1分)×2問×10名
☒ 質疑打ち切りの提案
・株主からの質問が相次いで総会が長時間化した場合、 議長と弁護士・事務局が連携し、議長から質疑打ち切りの提案を行い、
株主の拍手を得て議事を進行する。
この提案は総会全体を2時間程度で終了することを目安に行う
☒ 動議対応
・議長不信任、休憩、議案修正等の動議に対しては、株主が全て拍手して否決できるように、議長は「原案にご賛成の方は
拍手をお願いします」と議場に諮る
※次回はこの続きから始めます。
(注)【ビジネス豆知識】は今回もお休みします。
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