2017年2月1日
労働生産性の向上と働き方改革について(2)~ACS便りNo.5
大変お世話になっております。株式会社ACSの淡路です。
『ACS便りNo.5(2017/2/1)』を送付します。
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いいたします。
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『労働生産性の向上と働き方改革』について前回の続きです。
1.昨年来、アベノミクスの「働き方改革」と「生産性向上」の関
「働き方改革」における「長時間労働の是正」や「同一労働同一賃金」等の処遇改善は、それ自体がコストアッ
プ要因なので、 本来、生産性を向上させない限り実現できるものではありません。
また、「働き方改革」は全業種で取り組むべき課題なので、生産性が高い製造現場以外の職場、特に非効率と
言われる本社管理部門やサービス業等で生産性向上の成果を出さないと実現できません。
(私はサラリーマン生活35年間をずっと本社管理部門に所属していました。その間何回か、「ホワイトカラー
の生産性向上」 が社の方針となり、OA機器活用による作業時間短縮、「業務分析」や「業務プロセスの見直
し」による業務効率化に取り組みましたが、生産性向上の効果はあまり実感できませんでした。)
昨年の議論では「働き方改革」と「生産性向上」の関係が必ずしも明確ではありませんでしたが、ようやくこ
こにきて両者の関係について突っ込んだ議論がされるようになったと感じています。
2.ACSが「働き方改革の推進」というテーマでコンサルティングを行う時の進め方の一部について説明しま
す。
(1)目的の明確化
①「働き方改革」と「生産性向上」は、目
と社員の能力発揮」であることを明確にします。
②具体的には、「生産性の向上」により「働き方改革」の「長時間労働の是正」等の処遇改善を実現。
この「働き方改革」で「優秀な人材確保と社員の能力発揮」を可能にし、これにより「企業の収益力向上と
持続的成長」を実現。「生産性の向上」は「企業の持続的成長と収益力向上」にも貢献
〈生 産 性 の 向 上〉
⇓ 生産性向上で実現
〈働 き 方 改 革〉
⇓
〈優秀な人材確保、社員の能力発揮〉
⇓
〈企業の収益力向上と持続的成長〉
※働き方の多様性を認める「働き方改革」を実施することで 生産性を向上させることができるケースも
ある、 つまり、「働き方改革」と「生産性向上」の目的と手段の関係が上記と逆になる場合も承知して
いますが、話をシンプルにするため上の図では割愛しています。
(2)経営トップの取り組み宣言
・経営トップが「生産性の大幅向上で働き方改革を実現し、 収益力を向上して持続的成長をめざす」ことを
中期経営計画で宣言して本気度を示すことが不
※生産性を大幅に向上すれば、働き方改革を実施しても 業績は向上する。SCSK他実例あり
(3)生産性の向上
①ふたつの目標の設定
・改善レベルの生産性向上(目標:年間3%アップ)と 改革レベルの生産性向上(目標:中期的に30%
アップ)のふたつの目標を認識して活動を推進する
②生産性向上策の実施
・上記のふたつの目標を達成するために以下の施策を推進
■意識改革
・上司が会社にいる間は部下も残るという悪い慣行をなくす
・仕事の配分を特定の優秀な部下に偏らせない
・人事評価は仕事の成果で行い、労働時間が長いことでは評価しない
・管理職は残業がつかないから労働時間は長くなっても構わないとの考えを改める
・生産性向上策(働き方改革の達成策)は会社から与えられるものではなく、社員自らが考えるもの
■業務量自体の削減
・「業務分析」によるコア・ノンコア業務の区分とそれぞれにかける時間の適正化
・
・不要不急業務の削減、会議時間の削減、決裁階層の数減少
■削減して適正化した業務の効率化
・ITの最新ツール(ウェブ会議システム、IoT等) を使った業務効率化、テレビ会議システムの
導入、職場配置の見直しによる移動時間の減少
■モチベーションを維持・向上す
・従業員に労働時間削減のインセンティブを与える 仕組みづくり(人事評価基準に「生産性向上」の
項目と指標を設定)
・仕事の配分を本人が決め
・生産性を上げて残業を削減した分は賞与や手当等を増額し、年収が減らないようにする
・残業削減で浮いた時間を語学や専門知識の習得という自己研さんに
(4)働き方改革の課題対応
①生産性向上の成果を見ながら、働き方改革の課題に対応
②各企業が取り組み始めた働き方改革の施策
週休3日制、1日7時間労働、在宅勤務、朝方勤務、インターバル制、定時退社を促す残業代支給、
脱時間給制度
日本電産は、優秀な人材確保と社員個人の能力向上のためには働き方を抜本的に変える必要があると判断し、
2020年までに1,000億円を投資(生産部門と開発や事務の間接部門にそれぞ
同年に国内従業員約1万人の残業をゼロにするという方針を発表しました。(日本経済新聞2017年1/25)
また、健康経営を掲げ、労働時間を大幅に減らしても連続して増収増益を実現している大手SIerのSCSKは、
業界の中で大学生に最も人気がある就職先だそうです。
高度経済成長を支えた日本型雇用が通用しなくなり、働き方の多様性が求められるようになった今の社会では、
『生産性を向上できず、働き方改革が実現できない会社』は、自然と淘汰される時代に入ったと思うのは私だけで
しょうか?小手先の対応で済む話ではないことだけは確かだと思います。
※「生産性向上、働き方改革」で参考になる書籍は、
①「生産性」 伊賀泰代著、ダイヤモンド社
②「残業ゼロがすべてを解決する」 小山昇著、ダイヤモンド社です。
①は生産性のロジックを理解するのにとても有益です。
②は中小企業で残業を減らして業績を伸ばした会社の実例が豊富です。
いずれも大変参考になるのでご一読をお勧めします。
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【ビジネス豆知識】
◎日本の人口構造の変化
少子高齢化による生産年齢人口(15歳~64歳)の大幅な減少
⇒女性、若者、シニア、外国人材で賄うことが「働き方改革」の課題
・2015年
総人口:1億2,709万人、14歳以下:1,589万人、
15歳~64歳:7,629万人、65歳以上:3,347万人
・2030年
総人口:1億1,662万人、14歳以下:1,204万人、
15歳~64歳:6,773万人(856万人減少)、65歳以上:3,685万人(338万人増加)※増減は2015
・2060年
総人口:8,674万人、14歳以下:791万人、
15歳~64歳:4,418万人(2,355万人減少)、65歳以上:3,464万人(221万人減少)※増減は2030
(出所)総務省「国勢調査」、 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 (平成24年1月推計):
出生中位・死亡中位推計」 (各年10月1日現在人口)、厚生労働省「人口動態統計」
◎日本で働く外国人の数
2016年に4年連続で増加し、初めて100万人(日本で雇用さ
実習制度を通じた人材(3割弱増)や留学生(8割増)が増加。 国別では、中国やアジア諸国が多い。
以 上